Vase

目黒川沿いにあるアパレルのセレクトショップの設計。15年近く営業を続けてきた店舗が手狭になったことから移転することとなり、既存店舗の隣に建つ築70年の木造住宅をショップへと改修した。Vaseは、クラシック&アヴァンギャルドをコンセプトに店主独自の感覚で集めたブランド、洋服をセレクトするショップだ。この計画では、世界中からセレクトされ集められた商品のようにさまざまな異なる形や素材・仕上げを集めて場を構成することで、こだわりの詰まったショップのコンセプトを表現した場所を作ることを考えた。
計画地となる木造住宅は、あらゆるところが傷んでいてそのままでは使えない状態だった。そこで傷んだところは取り去り現しとなった躯体を生かすように、白やグレー、モルタルといった無機質な仕上げで最低限の修繕を施した。什器にはラーチ合板や波板、亜鉛メッキやクロメートメッキ、段ボールにガラスといった日常の中にある建材や素材を組み合わせて使い、むき出しとなった躯体の上には直線や丸い形のネオン管を古い建物と対比するように設置している。ドアハンドルや試着室のフック、ハンガーパイプを吊るすためのレザーといった機能的なパーツは、Vaseが取り扱うブランドのデザイナーに製作してもらった。
古い建物の中に新たに集めた形や素材・仕上げが混じり合うことなくフラットに並ぶ空間。昔からの風景を残す木造住宅に新しい機能が入り込むことで生まれたコントラストが、個性的な商品と響き合いVaseらしい場所となることを目指した。